Sakiko のアメリカ暮らし徒然記:仕事、遊び、文化

4/8/2004

Eternal Sunshine of the Spotless Mind

Filed under: - admin @ 6:53 pm

晴れた日には、何故か映画を見たくなるのは私だけだろうか。Gym から戻り、しっかり (?) 3時間ほど仕事した後に、「やっぱり天気だから映画か」ということで、恒例の The Grove に出向いてジム・キャリー主演の最新作「Eternal Sunshine of the Spotless Mind」を見ることにした。
ジム・キャリーというと、どうしても大口を開けてギャーギャー騒ぐコメディを想像してしまうが、この映画は違う。いつものジムを垣間見ることすらできない。コメディ的なタッチは存分に含まれているが、避けられない時のいたずらに翻弄される恋愛の切ない感情を伝えてくれる作品。「Something’s gotta give」のようにストーリーの行間にちょこちょことコメディ的なタッチを入れた作品とは違い、この作品は喜劇と悲劇の極端な両極性を持たせた作品といってもよいかもしれない。ジムの恋愛のお相手は、タイタニックで一斉を風靡したケイト・ウィンスレット。髪を緑やらオレンジやらに染め替える個性的な女性を演じる。

ストーリーは単純なのだが、描写の仕方が独特で途中混乱しそうになる。基本的には、ジム演じるジョエルという男性と、ケイト演じるクレメンタインという女性との恋愛物語。ある日海辺で出会った二人は意気投合し、付き合うようになる。親しく付き合う二人だったが、時が経つにつれ徐々に趣味思考の食い違いを意識しはじめる。最終的には喧嘩の連続となり、お互いの関係に終止符を打つ。
ところが、人間の記憶というものは、電気のスイッチのように突然オフにはできないもの。終止符を打ったとはいうものの、甘い記憶や切ない記憶は時に波のように押し寄せ、失ったものをさらに深く記憶の中に刻みこんでいったりする。コンピュータのように、保存しておきたくないメモリ(記憶)を削除することができたなら…。
映画の中では、そんな記憶削除を専門とする医者が登場し、まずはクレメンタインが記憶を消すことになるわけだが、実際のところ人間に記憶を消すほどの強さがあるだろうか、と始終考えてしまった。どんなに辛い記憶やいやな記憶でも、私など、記憶も「私」の一部なんだぐらいに考えているほどで、それらを消すってことは自分の一部を消してしまってこと…と疑問だらけになってしまう。とても私にはできない行為だ。
まあ、とにかく、終止符を打った後もクレメンタインのことが忘れられないジョエルは、ある日クレメンタインの働く本屋へと向かう。だが、ジョエル関連の記憶をすべて消したクレメンタインは、当然ジョエルの顔など覚えてはいない。そんなことを知らないジョエルはとことん傷つく (当たり前だろ〜)。そして、意を決して、自分自身の中に行き続けるクレメンタインの記憶を消すことにする。この消す作業の部分が結構冗長で、私としてはもう少し割愛して欲しかったのが、多分この部分をコメディとして描写したかったのだろうと思う。記憶が消えていく過程はフラッシュバックのようにして描写されていくのだが、自分の記憶が無くなっていく様子を見守る意識自体はしっかり働いているので面白い。記憶が消えていっていることを意識しながら、消されないようにと逃げまどうシーンもある。どこまでが記憶で、どこからが記憶を見ているジョエルの意識なのか混乱しそうになるシーンもいくつか。その辺りがこの映画の面白さだろうと思う。
さて、記憶を消す医者 Dr. Mierzwiak を演じるのは、ベテラン俳優トム・ウィルキンソン。このトムのところでリセプション係メリーを演じるのが、「スパイダーマン」で一躍有名になったクリストン・ダンスト。20歳そこそこのメリーだが、実は記憶を消したことがあったことが発覚する (本人は記憶を消したことすら忘れていた)。なんと、30歳以上年上の Dr. Mierzwiak に恋した上に不倫関係になってしまったことがあるのだった。なのに、ジョエルの記憶消去作業の際に二人っきりになると、意識化で何かが働いたのか、突然 Dr. Mierzwiak にアプローチ。以前から好いていた、と告白し、キスしてしまう。記憶を消したにも関わらず同じ結果になってしまったというわけだ。
そして、クレメンタインの記憶をきれいに消したジェエルは、ある日また突然クレメンタインと再会する。もちろん、二人とも互いの記憶はないので、新しい出会いという設定になるのだが、これまたすぐに意気投合してしまう。一方、自分が記憶を消したことがあったという事実にショックを受けたメリーは、手術を受けた人間に、手術前のインタビューを録音したテープを送りつける。このテープには、記憶を消したい理由を募った患者本人の声が録音されている。意気投合し、いざジョエルのアパートに急ごうとしたクレメンタインは、出掛けにこのテープを見つける。アパートに向かうジョエルの車の中で、クレメンタインはこのテープを聞いてみる。すると、なんと、以前に付き合ったジョエルとの悲惨な毎日を嘆く自分の声が聞こえてくるではないか。混乱の渦の中、クレメンタインは車を降りてしまう。当然混乱したジョエルだが、とりあえずアパートに戻ってみると、そこにもまた同じようにテープが届けられていた。聞いてみると、内容は先ほど車で聞いたものと同じで、以前付き合ったクレメンタインとの不具合を嘆く自分の声が聞こえてくる。引き返してきたクレメンタインもそれを聞いて愕然とする。
甘く輝かしい新しい出会いだったはずだったのに、実は以前に付き合っていて悲惨な終結を迎えていたことをお互いに確認する。好きなのに、将来が見えているではないか、ということで、やはり離れようとするのだが、これが「赤い糸」の原理なのか、それが出来ずに二人は廊下で抱き合ってとりあえずのハッピーエンドに。結局のところ、人間の記憶はそう簡単には完全消去できない、ということだろう。
何とも単純な話をこれだけツイストしてくれた〜と感激するばかり。途中が冗長ではあったが、なかなかの映画だった。ジム・キャリーファンには是非お勧めだ。

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